後輩
母校に出張講義、という珍しい経験をしてきた。もっとも、集まった大学教員のうち、ほかに少なくともお二方、同様の立場の方がいらっしゃった模様。「珍しい」というのはこちらの気負い過ぎか。
「自由な校風で」「びっくりされるかと思いますが」「掃除も行き届いていないかもしれませんが」「そういう学校なんで」と、出張講義でまず聞くことのない校長や担当者のお話が続く。「びっくりされるかもしれない」ような高校の場合、「外部の方に叱っていただく方が生徒が聞き入れますので、ご面倒でも遠慮なく叱ってください」などと煽ってくることさえある。
ナントカ重点校になっても、基本的には変わらない学校である。
会場はそれまでふだんの授業が行われていた通常教室。そこかしこにむき出しの私物や段ボールが置きっぱなしになっている。相変わらずである。もっとも、今日は床の綿ゴミ、紙ゴミが少ない。彼らにしてはがんばって掃除したのか、今はこういう学校なのか。
「不審者を判別しやすくするために、指定の上履きを履け」とそこいら中にはり紙がしてある。制服のない学校には思いがけない苦労があるものだ。というよりも、不審者という現代的なアイテムを「上履きを履け」という古典的なドレスコードに絡めているところにこの問題の根深さを感じる。相変わらずである。
講師(私)が黒板の前に立っていてもなお、缶やらペットボトルやらのお茶を飲んでいる生徒が数人。出張講義は二桁経験しているが、初めて見る。中には弁当箱を広げている者もいる。もちろん初めて見る。強者である。
ところが、一風変わった、やたら長時間続くチャイムが鳴り終わると、机の上から弁当箱も飲み物もきれいに片づけられた。もちろん、講義中に飲食する生徒は皆無。教師に指示されていたのなら、休み時間にも飲食はしないはずである。明らかに、自分の意思で休み時間と授業中を切り替えているのだ。後輩たち、思った以上に優秀である。もっとも、私はそっちのお行儀のよい生徒だったが。
これだけできる生徒たちなのだから、「掃除も行き届いていないかも」などと学外者に言い訳している暇に、「お客が来るのだからきれいにしよう」と生徒を煽ればよいのだ。講師を案内する係も、生徒に任せてみればいい。学外者の接待を任されて緊張する数分間、運がよければ個人的に学外者と会話ができる数分間が、生徒の人生にとってどれほど貴重な経験となるか。実際、そうやってくれる高校はたくさんある。失礼のないように最低限のマナーについて指示しておくこと、案内係にそそうがあったら本人なり教員なりに指摘してほしいと講師に伝え、実際にそそうがあったら生徒をきちんと指導すること。必要なのはそれだけである。
「自由な校風」を満喫しているのが誰なのか、あらためて実感した一日であった。
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コメント
お正月に行くから、先生にその話をしてみるよ。
投稿: 後輩 | 2008.12.17 23:18