Top of UK
原題はStreetdance。イギリス初のダンス映画(正確にはストリートダンス映画。「フル・モンティ」とか「リトル・ダンサー」とかあった。あれはダンス映画じゃなくて炭鉱映画か?)らしい。ストリートダンスのチームがクラシックバレエのダンサーをチームに入れなければならなくなり、当初反発し合うもののやがて、という青春映画の定石通り。
ただし、「無理解な大人」ではなく「れっきとした(しかも格上の)」対抗勢力(バレエ)が登場するあたりが階層社会イギリスっぽい。ストリートのメンバーがみな「昼間の仕事」を持っているのに対して、バレエダンサーは仕送りでレッスンを受けている。実家が大金持ちな練習生もいる。ストリートに最初に理解を示すバレリーノ(男性のバレエダンサーはそう呼ぶらしい。劇中ではバレエボーイと呼ばれている)はアルバイトをしている苦学生のようだ。小さいことだがあり得ない話を「ひょっとしたら」と思わせるのはこういう細やかさだ。
レッスンバーを挟んで互いの身のこなしを誇示して挑発し合うシーンが猛烈にいい。異種ダンスバトルである。ここできちんと反目し合っておかないと、後半がいかにも出来レースになってしまう。
バレリーナにストリートダンスを踊れというのは、歌舞伎役者によさこいソーランを踊れと言うようなものか? 狂言師にストリートダンスを踊れというようなものか? しかし日本には近い例が実際にいくつもある。ミュージカルに主演して海外公演を打つ歌舞伎役者、現代劇で映画に出る狂言師。プロレスに進出して「狂言プロレス」と揶揄された狂言師さえいる。ジャンル間の垣根が彼の地では日本よりはるかに高いのだろう。「ストリートもバレエもない。ただダンスだけがある」という言葉の重みが、今ひとつ伝わらないので、イギリス人とは見方が異なっているはずだがそれはやむを得まい。
ストリートのチームがバレエ学校の稽古場を借りるに至る流れがテンポよく描かれているのが小気味よい。「ストリートダンスなのになぜ路上で踊らないの?」という至極当然な疑問にもきちんと答えている。しかもその場しのぎではなく、他のシーンでも整合性を保つためにきちんと配慮して「かなりの頻度で路面が濡れている」。
バレエ学校の廊下を歩く練習生が、「いかにも」な姿勢なのがいい。本当に練習生をエキストラに雇ったのだろうか。「タカラジェンヌ」の物まねをする芸人がいるが、あれの端正な感じ。本当にあんななんだ。
主人公はストリートダンスの素人だったという。猛特訓をしてUKチャンピオンを目指しているといってもおかしくないところまで踊れるようにしたという。バレエダンサーたちも長いブランクを猛特訓で埋め合わせたという。ロイヤルバレエ団を目指しているように見えるところまで持ってゆくのがいかにもプロだ。
それほど多くのシーンを割かれないのだが印象深いのが、「長身過ぎてロイヤルバレエ団を受験させてもらえない」というバレリーナ。演じている女優自身が実際に経験した屈辱らしい。柔道漫画『YAWARA!』の「のっぽのねえちゃん」こと伊東富士子さんのようだ。
富士子さんがバレリーナとして培ったリズム感と柔軟性、そしてバレリーナとして致命的だった長身を利して柔道界で頭角をあらわすように、長身のバレリーナにはあっと驚く見せ場が用意されている。ちょっと泣きそうになる。
実は身近に、「小柄すぎてオーディションを受けられない」というダンサーがいる。彼女にも、小柄でなければつとまらない踊りが見つかりますように。
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